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大阪高等裁判所 昭和37年(ネ)634号 判決 1963年11月28日

褒徳信用組合

事実

控訴人は、

「本件代物弁済予約が締結せられた昭和三〇年一二月二日当時正興信用組合が訴外横山司同横山産業有限会社に対し幾何の貸付金を有していたのか不明であり、従つて代物弁済される被担保債権額が不明である。若し右代物弁済予約当時貸付金がなかつたとすれば、このような代物弁済予約は無効である。よつてまた本件仮登記も無効である。被控訴人主張の地上建物の代物弁済額金八九万七三四〇円は右代物弁済当時の右建物の固定資産評価額であるし、本件土地の代物弁済契約は被控訴人が本訴係属後において裁判所の即決和解によりなしたものである。代物弁済予約による被担保債権以外の債権を原因として、債務者所有の物件に仮登記が存することを奇貨として、その仮登記に基き代物弁済による所有権取得の本登記をなしても、右物件につき登記簿上利害関係を有する第三者に対抗しえないものである。要するに被控訴人主張の本件代物弁済予約は、被担保債権が不特定且つあいまいであるから無効で、従つて本件仮登記も無効で右仮登記の本登記も無効である。」と主張した。

理由

控訴代理人は、当審において被控訴人主張の本件代物弁済予約は、被担保債権が不特定且つあいまいであるから無効で、従つて本件仮登記本登記はいずれも無効であり、代物弁済予約による被担保債権以外の債権を原因として、たまたま存する仮登記に基き代物弁済による所有権取得の本登記をしても、右物件につき登記簿上利害関係を有する第三者たる控訴人に対抗しえない旨主張するけれども、(証拠)を綜合して考えると、本件で問題となつている代物弁済予約においては当初本件建物及び土地につき代物弁済額が合意せられていなかつたこと及び右代物弁済予約当時正興信用組合は、訴外横山産業有限会社及び訴外横山司に対し、被控訴人主張通り計三二八万五〇〇円の貸付金債権と、訴外横山司に対する計金一三〇万円の手形貸付債権とを有し、これらがいずれもいわゆる焦付債権となつて残存したこと並びに被控訴人はその主張する通りの経過で本件建物を右債権中金八九万七三四〇円の代物弁済として取得し、次いで裁判上の即決和解により、訴外横山スミコ相続人司等四名との間において、本件土地の代物弁済額を金二三一万二四六〇円と合意し、前記債権についての右四名の保証債務中同一額の代物弁済として右土地を取得した事実を認定することができる。思うに代物弁済予約においては代物弁済額が当初より合意せられるのが通例であるけれども、当初これが合意せられなかつたからとて必ずしも右予約を無効とすべきでなく、要は代物弁済予約完結までに合意せられることを以て足ると解すべく、本件土地を被控訴人が取得した経過が右認定の通りである以上、控訴人の当審における主張は到底これを採用することができない。

被控訴人の反訴請求中所有権移転登記の抹消登記手続を求める部分あるものとし、これに反して控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。

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